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Sugary 1-4


なにがどうしてこんなことになってしまったんだろう。
たまたま隣に引っ越してきたのが、よりによって高瀬隼人だなんて。
あれから1週間。
自分の運のなさにうんざりしてる。







「あーっ!やばい、寝坊したっ~!」


木曜日の朝、私は決まって寝坊する。
7時半に家を出なきゃいけないのに、今は7時。やばい。30分しかない。
寝起きの体を奮い立たせて、リビングに走る。


ソファでまだ眠っているミュウのために、キャットフードをお皿にあけ、それから自分の準備をする。
メイクをする時間を優先して、朝食は後回しだ。
今日の服は明るめのベージュのセットのスーツに決めた。
クローゼットの中のINDIVIの上下をさっと選び、マッハで着替える。


「ミュウ、行って来るからね?」


バタバタとリビングを走り回り、身支度を整えながら、ミュウに話しかける。
すると彼女はむっくりと体を起こして、つぶらな瞳をこちらに向けた。
目が合ったのは一瞬で、「行ってくれば?」的どうでもよさそうな顔をされ、
そのままキャットフードに直行。


まあいつものことだ。
彼女は私の同居人だが、至ってマイペースなのは今に始まったことじゃない。



玄関の鍵を閉めたところで、


「おはよう悠木。今日も会ったな」


声を掛けられた。
何でこう…毎日毎日、嫌味なほどに、
同じ時間に出くわしてしまうのだろうか?





「…あのさ、毎日声かけるのやめてくれない?」

「なんでだよ。俺たちお隣さんだろ?朝会ったら挨拶するだろ普通。」

「じゃあ会わないように出勤の時間帯かえてよ」

「無理。俺の体内時計は7時半に家を出るって決まってるんだよ」




高瀬と私はこのやり取りをここのところ毎朝繰り返している。
思わず溜息と共に漏れる舌打ち。
頭一つ分高い高瀬を、私はわざと眉を顰めた表情で見上げた。




「……もういいわ、お先」

「おい、ちょっと待てって。」



廊下を先に歩く私の後ろから、めげずに声をかけてくる高瀬を無視する。
これ以上会話をするのが面倒だった。低血圧な私は朝誰かと会話をするのが滅法苦手だ。
それでなくとも隣に高瀬が住んでいること自体、私にとっては最悪な状況この上ないのに―――。



エレベータの前で立ち止まった私の隣に高瀬が陣取る。
ちょうどきたエレベータに乗り込むと、
当然のように乗り込んできたこの男に、無性にイライラした。



「いつもいつもなんでそんなに機嫌悪いんだよ」



舌打ち交じりに
そう言って、高瀬が覗き込んでくる。




「ほっといて?」

「相変わらずかわいくねーな」

「あなたに可愛く思われなくてもいい」



私は高瀬に対して、いつも喧嘩腰だ。
この男のことを嫌っているのだから仕方が無いと思う。
なのに、高瀬はそれを知っていていつも私に絡んでくるから益々面倒なのだ。



「お前だけだよ。そうやって俺に媚びない女は――」



クックと喉を鳴らす高瀬。何が楽しいのだろうか。
ネイビーのスーツとブルーのストライプのネクタイが
爽やかさを演出していて、それがまたすこぶる似合ってるから癪に障る。






隣に知り合いが住んでるということは思った以上に厄介だった。
このマンションのいいところは、“誰も知り合いがいない”ところだったのに。





――誰も知らない場所で、独りで暮らしていくと、決めたのに。




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