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Sugary 1-2

何で……!?
液晶にうつっているのは、確かにあの男だった。


見間違いじゃない。熱いシャワーを浴びたおかげで、すっかり頭は冴えている。


何で何で何で。
馬鹿の一つ覚えみたいにそのフレーズしか浮かんでこなかった。


(――何でアイツが私の家の前にいるの…?)


無意識にごくりと喉を鳴らしていた。
液晶画面からも分かるぐらいにその瞳は透き通っていて。
それなのに、どこかしら挑むような目つきは昔のままだった。



ピンポーンと二回目のチャイムが鳴り響いた瞬間、
私はビクンと体を揺らしてしまった。
恐る恐る受話器をとる。


「……はい…」

「あ、悠木?俺。」



この短い台詞から読み取れることはつまり

“この男は、ここの住人が、私、悠木(ゆうき)美奈子であると知っている”
ということ。


(有り得ない…)


私の反応がないことに痺れを切らしたのか、さっきより低い声で

「――ちょっと開けて」

そう続けた。

「…なんで?」

「いいから開けろ」

「いやだ」


液晶の中の男の顔が俄かに不機嫌になる。
すると不意にその画面から男が消えたと思えば、


―――ドンドンドン!!!

(なっ!!!)

いきなり玄関扉を叩く音が響いて、私は思いっきり慌てた。
今まで静かに眠りについていたミュウが、むくりと起きたと思えば何事かと怪訝な顔を向けている。


「ちょっとっ!!やめてよ!!」


私は溜息ともとれる舌打ちをしながら、早足で玄関に向かった。


「あーもうっ!開けるから!やめろ!!」


ぴたりと。
その不快極まる音が止んだ。

(なんなのっもうっ!!)



鍵を開錠し、ゆっくりと扉を開けた瞬間、外にその男の気配を感じ取った私は
スルリと部屋から抜け出して、後ろ手に扉を閉めた。
キッと睨みつけると
Tシャツにジーンズという普段着に身を包んだ男と、目が合う。



「だから開けろって言ったのに」


まるで自分の行動は私のせいだとも言わんばかりの口ぶり。
わざと溜息を吐き出した男の態度に、流石にイラっとした。


「はぁ?開けろってあんた何様よ!あんな風に玄関ドンドン叩いて、近所迷惑だって分からないの!!?」


思わず声高に叫んでいた。

「つーか今のお前の声の方が、よっぽど近所迷惑」

「なっ…!!!」



怒りの感情をわざと挑発するような台詞に、
私は言葉に詰まった。
―――あまりにもムカついた時、人間は思考が止まる生き物なのだろうか。


「大体何!?なんであなたがここにいるの!?」


この突然すぎる男の出現に、私は自分でもはっきりと分かるぐらいに、ひどく戸惑っていた。
自分の声が上擦っている、――それを嫌味な程に落ち着いた態度で聞いていた男


―――高瀬隼人は、


「なんでって、俺たち、これからお隣さんになったから」



そう言って、
ニッコリとした笑顔を私に寄越した。
“偶然”というのはなかなか厄介な事象を伴うことある。
――例えばそう、505号室のこの家を買ったことを、後悔するぐらいには十分な程の。


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