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Sugary 3-5


「――…利…樹、……」



反射的に振り向いた。
思わず息を呑む。
私のことを“美奈子”と呼ぶ異性なんて、ほとんどいないから。
煙草でやられて少し掠れた声を私はよく知っている。


(どうして……、どうしてまた現れるの……?)




目が合うと、利樹はその綺麗な三日月状の目を細めた。
その涼しい顔に、否応なく心臓がドクンと鳴り響く。
終電間近の京都駅改札は帰りを急ぐ人達で溢れていて、私達三人だけが空間を切り離されたように立ち止まっている。




「……香山さん?」



――香山。それは利樹の苗字だった。
その声にハッと意識が研ぎ澄まされ、私は後ろを振り返った。
雑踏に紛れても、高瀬の声はよく通る。
二の句を継げないまま立ち尽くした私を余所に、高瀬が唐突に利樹の名を呼んだ。



「え……?君は確か、……」

「高瀬です。4月からこっちに異動してきて、御社の担当になったんですが、香山さんとはまだ一度しかお会いしてませんよね」

「……あぁ。そうだったね」




7センチのピンヒールを履いても、この2人の背は頭一つ分高い。
私を挟んでふたりが頭越しに会話をする。
その内容に、唖然とした。



(担当って……まさか……!)


どうして今まで気がつかなかったの?
私は肝心なことをすっかり忘れていたのだ。
高瀬の担当の大手住宅メーカーS社に、利樹がいることを―――。




「――それにしても。香山さんは悠木とお知り合いなんですか?」



その質問に一瞬にして冷や汗を掻いた。
固まる私にチラリと鋭い一瞥を寄越した後、高瀬が再び利樹に向き直る。
私達を訝しがる様子が高瀬の言葉からひしひしと伝わって、内心私は本気で焦っていた。




「……あぁ、悠木さんは以前うちの担当だったからね」

「へぇ。“美奈子”なんて呼ぶから、俺はてっきり―――」

「高瀬!!」




これ以上は黙っていられなかった。
焦る心は益々早鐘をうち、その衝動で声が上擦った。
これじゃあまるで私が動揺しているのを前面に押し出しているみたいだ。
だけど――、叫んで会話を止める他、私に為す術はない。




二人に落ちる沈黙が突き刺さるように痛かった。
早く、早く、すぐにでも。この場を去りたかった。
せっかく利樹を忘れる決心がついたのに。
一瞬にして私の心を掻き乱す利樹が憎かった。
それ以上に―――、ともすれば振り出しに戻ろうとする自分が情けなくて。
衝動的にツンと鼻の奥が痛くなって、泣きそうになる。




どうして私はこんなにも不器用なんだろう………?





「――、じゃ、夜も遅いんで、俺達失礼します。香山さん、また改めてご挨拶に伺います。……ほら、悠木、行くぞ」

「え?ちょっ……、高瀬?!」



高瀬の声は、いつもより幾分か低くて、抑揚がないことに気付く。
私の腕を持ち上げて、そのまま引っ張って歩き出す高瀬につられて、私は足を踏み出した。
背中から痛いほどの視線を感じたまま、高瀬の背中を追いかけていた。





※お知らせ
Sugary1-1及び1-6を誤操作で削除してしまいました泣。1-1は描き改めてアップしましたが、1-6はもう少しお待ちいただけたら幸いです。申し訳ありません!ツキシマあかり


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comment

Secret

きゃあ更新されてるー!!!
めっちゃカンゲキです。ウレシイ。

そしてやっぱし鉢合わせですね☆
嫉妬してるんかなっかなっ!!?
次の展開も楽しみです。

Re:

yoppi様 お返事遅くなってすみません!もちろん!鉢合わせですよ、むふふ。三角関係はやはしこうでなくっちゃですね!嫉妬かどうか…今日の更新をみてくださったらはっきりお分かりになるかと思います☆☆是非悶えていただきたいですねv-10yoppi様のお言葉、いつも励みです!!
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