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Sugary 3-2

「美奈ちゃんもビールだよね、おにいさーん!生中追加ね!」



仲野さんが私の返事を聞かずして、店員に声を掛けた。
ぺたんこになった座布団に座ったはいいものの、なんとなく落ち着かない。
お酒が来るまで手持ち無沙汰な私は、ざっとまわりを見渡した。
20数名いる営業課の連中は既に酒が入って、皆甲高い声で盛り上がっている。



「よぉ、おつかれ」

「…お疲れさま」



高瀬はビール片手に私を見やった。
少し浮ついた表情。お酒がすすんでいるのだろう、赤く染まった頬に、肘まで捲り上げられたワイシャツ。
高瀬は私に声をかけて上機嫌な笑顔をみせた。



別になんてことはない。
そんな笑顔、なんてことはない。
私は平常心を装って(いや、装っているわけではない、これが普通だ)、言葉を返した。







営業課の人間が集まる会に出席したのは、おそらく初めてだった。
元々私は社交的でもないし、営業課にはライバルが多すぎるから。
男の営業は特に女の私を敵視する。
自分よりデキル女なんて目障りなだけなのだろう。
だから、私も敢えて自分から、わざわざ社員と親しくしようとは微塵も思わなかった。



高瀬の隣にはちゃっかりと佐々木優が席をキープして、ひっきりなしに高瀬に質問を投げかけている。



「高瀬さんって~、出身はどちらなんですか~?」
「高瀬さんって~、何型ですか~?」



目の前で繰り広げられる会話。
媚びいった佐々木の上目遣い。
高瀬が返答するごとに、きゃっきゃっと声を上げてはしゃいでいる。


(分かりやすい女…)


私は心の中で舌打ちを落とした。
明らかに、佐々木は高瀬を気に入っている様子だった。
別に会話に混ざる気もなくて、私は隣の仲野さんとばかり会話をする。
だけど、佐々木特有の甘えた声は、私の鼓膜によく響く。
聞かなくてもいいのに否応なく聞こえてくるのだから仕方がない。



下心ありありの佐々木に嫌気が差す。
だけど高瀬は別に嫌がる様子もなく、楽しそうに返答しているのをみて、なんとなくイライラした。
私はカルシウムが足りてないのか、と自分で自分を心の中で卑下してみた。



その時、隣の仲野さんが不意に私の耳元に顔を近づけて、
他には聞こえないほどのボリュームで、囁いた。



「美奈ちゃん、顔ひきつってるよ?」

「…え!?」

「ふふ、分かりやすいよね、美奈ちゃんって意外と」



そう言って、オレンジジュースを飲みながらウインクしてくる。


「何が分かりやすいんですか!?」

「ふふ、何でもないよ」



そう笑って曖昧にはぐらかされて、私は返事に窮した。
仲野さんはたまにこうやって意味の分からないことを言ってくるから、困るのだ。
洞察力に長けている人だとは思うけれど、私は自分が「分かりやすい性格をしている」とは思ったことがない。
まあいつものことだ。
そう納得してビールを一口飲んだ後、
お皿の上に小粋に盛り付けられた生春巻きに箸をかけた時のことだった。




「―――高瀬さんってどこにお住まいなんですか~?」



その問いにぎくりとして、必然的に箸が止まる。
チラリと私を見やった高瀬と目が合って、悪い意味で心臓が跳ねた。
高瀬は意味心な笑みを零してから、おもむろに視線を外す。



「京都の鴨川沿いのマンションに住んでるけど」

「えー?いいですねー!じゃあベランダから鴨川が見えるんですか~?」

「うん。もちろん」

「羨ましいな~!私のマンションは道沿いだからロマンチックのかけらもないですよ~」



行ってみたいな~と佐々木が続ける。


(絶対に来るな)



心の中でそう呟いた。
高瀬のマンションは、むしろ私のマンションなのだ。
高瀬は今、仮の住まいとして住んでいるけれど、私は違う。
それこそ佐々木に万が一でも、高瀬と私がお隣同士だと知られれば、きっと大変なことになるのは容易く想像できた。



私にとっては、大切な場所。
会社の誰ひとりとして、あのマンションに来て欲しくないと思う。
仲野さんは別だけど。
たとえ寝に帰るだけであっても、それでもいい。
高瀬が隣に住むことになったのは、想定外のことだったけれど、
それでも。
せっかく見つけた、私だけの2LDKなのだ――。
そんなことを頭の中でぼんやりと思っていた時、




「だーめ。あのマンションは誰にも教えたくないから」



高瀬の顔が急に真面目な表情に変化したと思えば、佐々木にそう返した。



「あのマンション、気に入ってるし、誰にも知られたくないんだよね。
それに―――…、」



チラリと私を一瞥してから、



「隣に可愛い猫も住んでるしな」



その妖艶な表情に不本意にも心臓がドキリと音を立てた。




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comment

Secret

更新お疲れさまですっ!
佐々木、なんなの。。
悠木も、なんなのっ
次も楽しみにしてます(o>ω<o)

Re:

yoppi様、こんばんは!お返事が遅くなってしまってすみませんv-356漸くパソコンを開けました~。佐々木はどうやら高瀬がお気に入りなようですね。悠木は悠木で相変わらずツンツンで笑。そろそろ甘くいこうかな?いつもコメント楽しみですっv-343
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