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Sugary 2-3


「――――って、美奈ちゃん聞いてる!?」

「あ、はいっ…ごめんなさい!えっと、……なんでしたっけ?」

「もー、今日の美奈ちゃん、ぼーっとしすぎ。」


そう言って、苦笑されたのは、今日でおそらく3回目だ。
同じフロアで働く事務の仲野さんが、赤ちゃんの宿った大きなお腹をさすりながら、
困ったように笑った。


13時過ぎ。営業は私以外には全員出払っていて、営業課のフロアーは閑散としていた。
もちろんあの男の姿もなく、私は正直ほっとしていた。
少し遅めのごはんを口にしながら、先ほど仲野さんに作成してもらった見積書とCAD図面をチェックする。


「――何かあった?」

「…え?」

「美奈ちゃんって、分かりにくいようで分かりやすいから」

「…何言ってるんですかっ!!」

「ほら、そうやってムキになるとこ。美奈ちゃんって案外子供ね~」


仲野さんが食後のプリンを至福の笑みで頬張って。
茶目っ気のある表情をしてそう揶揄してきた。
この人はいつも私より一枚も二枚も上手(うわて)で。こちらから何も言わなくても、
人の心を捉えているような人だった。


何かあった。そう言われれば、その通りだった。
日中のこの素面の状態で昨夜の出来事を思い出したら、顔から火が出そうになる。
だけど私は今日、何度もその時のことを思い出しては、仕事の手が止まる状態に陥っていた。


昨夜は、きっと、心が弱っていて。どうかしてたのだ―――。
そう思わないとやってられない。





高瀬に抱き締められたまま、漸く涙が止まったのはしばらくしてからだった。


高瀬は私の背中に手を添えて、上下に往復するように何度も撫でた。
嫌いな男なのに、その手の動きに、「抗えない自分」がいた。
薄手のカッターシャツ越しに、筋肉質な体つきがリアルに伝わる。
泣き止んだ途端に感じる高瀬の息遣いや、胸の鼓動に、どうしようもなくうろたえる自分が情けない。



だけど、あたたかかった。無性にあたたかかった。
高瀬の体温が私の体に浸透するように流れ込んできて。
その感覚に、一種の恍惚さを覚えた。
ひとのあたたかさに身を委ねるのが、こんなにも安らぐなんて、
久しく感じたことのないものだった。



利樹と別れて。
このマンションの505号室を買って。
ずっとここに独りで住んでいた私の隣に、突然高瀬が現れて。
嫌だと思っていたのにも関わらず、今こうして私は高瀬の腕から離れることが出来ないのはどうしてなのだろう――。






「――大丈夫か?」


どちらともなく離れた後、高瀬はそう尋ねてきた。


「うん、ごめん…」


泣きすぎたのか、頭がぼーっとして、体さえも気だるい。
だけど、心はすっきりしていた。
憑き物がとれたような、そんな感覚がする。



「今飲み物持ってくるから。ソファに座ってて。」


顎でしゃくられ、私は素直にその指示に従った。
そのままキッチンに向かった高瀬は、1分ほどして私の隣に戻ってきた。


「ほれ。水分補給」

「…ありがと」


差し出されたぺリエとエメラルドグリーンの透き通ったグラスを受け取る。
(こんなものを常備してるなんて、どこまでもいけ好かない野郎だ)
普段の私なら、そのぐらいの毒を吐くはずなのに、今の私は全くの戦闘不能状態だ。



隣に座った高瀬はビールのプルタブを空けて、喉を鳴らして飲んでいた。
私も同じように、ぺリエをグラスにあけて、半分ほど喉から流し込んだ。
爽やかな味がスーッと染みて、カラカラに乾いていた喉が潤っていく。




「悠木が泣くとこ見るの……2度目だよな」



横目で私をチラリと見た高瀬が、そう呟いた。








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comment

Secret

更新お疲れさまです
あたしも抱きしめられたいです。切実に。笑。
押し倒しちゃえばいいのにー!(*/ω\*)とか思ったりしました(笑)
これ以上書くとあたしの変態っぷりがあふれてきそうなのでこの辺でww

Re:

ヨッピー様 こんにちはv-291いつもコメントありがとうございます~!!
今日は夜ごはんを後にして先に更新がんばりました!!お、押し倒すですか!!きゃっ♪
高瀬と悠木がそんなきわどい関係になる日はいつのことやら(笑)でもきっと近いうちに必ず!高瀬に頑張ってもらいます!私の方が断然変態ですよん♪♪e-1
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