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Sugary 2-1

「――待てよ」


エレベータの前ですれ違う瞬間、そう言って高瀬は私を呼び止めた。
でも……、振り向けるはずがない。
こんな顔。こんな泣き顔、高瀬だけには見られたくなかったのに――。





嗚咽を我慢して、私は走り出した。
ピンヒールで走り続けた足はもうフラフラで。
ジンジンと痛みがひどくてとうに限界をきていた。
それでも、高瀬という存在から、一刻も早く離れたいという思いだけだった。
505号室はあともう数メートルだというのに
鉛を引きずっているかのように、足が重い。



「――待てって言ってんだけど!」


ちょうど高瀬の部屋の玄関の前で、後ろから強く右肩を掴まれた。
私は、高瀬に捕まってしまった。
高瀬の吐息が落ちるのをすぐ近くで感じて、たじろぐ。



嗚咽と走った後の息苦しさで肩で呼吸をすると、
高瀬の手の強さをはっきりと感じてしまう。


「おまえ…何で泣いてんだよ…」


頭上から響いてくる声から、
困惑がありありと伝わってくる。
きっと、この男は、私みたいなタイプが泣くなんて、思いもしてなかったんだろう。



「離して…、お願、い…、ほっといてよ…」


最後の余力を引き摺り出すように、声を出した。


今日は厄日だ。
朝から高瀬とひと悶着あったのが、そもそもの始まりだった。
それさえなければ、私は今日も仕事一色で、いつものように残業をして、終電近くの電車で帰って、
なだれ込むようにベッドに入っていただろうに――。
いつものように、仕事をしていたら、
利樹にも逢わずに、「逢いたかった」と切なげに響く、彼の言葉に動揺などしなかったのに――。



「忘れたのかよ」


抑揚のない声色で、高瀬がそう口にした。
頭の中で、「何が?」と考えた隙に、
強く手を引かれ、体を引き寄せられた。



(なんで……どうして……?)


ボスンと音を立てて、私の顔は高瀬の胸に収まっていた。
自分の鼓動なのか、高瀬のそれなのか、判別もつかないほど、私の思考は固まってしまっていた。
一度帰宅して、また出かけるところだったのだろうか。
高瀬はワイシャツにノーネクタイ姿で。
薄い布越しに高瀬の体温が伝わり、私はひどく狼狽していた。



「――入れ」



そう言って、私を片手で抱きかかえながら、
すぐ目の前の玄関に、素早い動作で鍵を差し込んだ高瀬は、
玄関を開けて、固まる私をその部屋に押し込んだ。



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comment

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平日やのに更新されてて感激です!ありがとうございます
あたし、強引な人、好きです(笑)
ドキドキハラハラが楽しい♪

今日、偶然このサイトを見つけました☆お話の続き楽しみにしています!!

Re:

yoppi様、こんにちは♪平日やのにその日は頑張っちゃいました!感激だなんて…!!v-343嬉しすぎますよぉ!!高瀬は今回何気に強引でしたねv-11これから小出しに強引さを出していきますからお楽しみに♪いつも励みです!

Re: はじめまして

こちらこそはじめましてv-237ひゃ~偶然見つけてくださったのですねv-22その偶然に感謝感謝です!ステキなメッセージ嬉しかったです☆更新頑張りますので応援よろしくお願いしますv-10
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