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Sugary 1-8

反射的に、顔を上げる。
久々に男性に名字でなく、名前で呼ばれた。


「――やっぱり。美奈子だった。」


そう言って、彼はなんとも複雑な表情をした。
戸惑いと、申し訳なさと、懐かしさを顔の上でごちゃまぜにしたような。





隣、座っていい?と当然の権利を酷使したように、彼は座った。
すぐ後ろにいた店員に、「ビールくれる?」と声を掛けた後、スーツを脱ぎ、ワイシャツ姿になる。


突然の再会にしばらく言葉が出なくて
私はぽかんと呆けてしまっていた。


(なんでこの人が、私の隣に座っているんだろう…)


まるで第三者のような疑問しか、浮かんでこなくて。
無意識にグラスを手にとり、口に運ぼうとしたが、空っぽで。


そんな私をチラッと横目で見て、彼はフッと笑みを零した。


「動揺してる?」

「…当たり前でしょ…」

「――俺も。」


私にしか聞き取れないような小さな声。
心臓が一気に跳ね上がった気がした。



「…こんなところ奥さんに見られたら、どうする気?」



彼の左手の薬指にある、存在感を放つ、その指輪を確認して。
わざと棘のある言い方をした。



しばらくの沈黙。その独特の間合い。
その焦らされる感覚が脳内にスッと蘇って来た。


昔からそうだった。私が質問をすると、時々こうやって時を置く。
それが無意識なのか、それとも計算済みの為す業なのか。



「――大丈夫だよ。今日から、子供と一緒に長野の実家に帰ってるから」



苦笑混じりにそう言った彼は、ちょうどワイシャツのポケットから、煙草のケースを取り出していたところだった。
高そうなシルバーのジッポ。煙草の銘柄。微かに香る香水。
なんら変わっていない。


変わったのは、「私達が別れた」という事実だけのように思えてきて、
なんだか言いようの無い虚しさに覆われてくる。



喉がからからに渇ききっていた。


とにかく、今のこの状況を、そして今の自分の気持ちを、お酒の力を借りて曖昧にしたくて。
そう思って手を挙げて店員を呼ぼうとした瞬間、


挙げていた私の手首を、彼が掴んだ。



「本当は…ずっと、美奈子に逢いたいと思ってた。」



何かを宿した瞳が、射抜くように私を捉えた。


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comment

Secret

うわーん!めっちゃ続き気になりますっ!!!
隣のカレも気になるしー!

Re:

yoppi様 こんにちは♪本館にもこちらにもコメントいただきありがとうございます!!全然こちらにコメントしていただいてオッケーですよん♪こちらのSweetHomeは他の連載と違って静かに更新できるので、私の気持ちもかなり穏やかです(笑)続き、期待しててくださいね!今から更新がんばります♪
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