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Sugary 3-4


(有り得ないって……どうかしてる…!!)



心臓がバクバクと波打つと共に、顔中に血が集まって、熱く火照った。
相変わらず高瀬と私の距離は近くて。
高瀬の呼吸を感じるだけで、私はどうにかなりそうだった。
だけど、今顔を上げることは絶対に出来ない。
焦りで握り締めた手に汗を掻いた。
高瀬も高瀬でそれ以上は何も話しかけてこなくて。





京都駅に着くまでの数十分。
後から思い出すと、不必要な汗を掻いた記憶しかない。




私はこの感覚を何度か経験したことがあった。
それこそ29年も生きてきたのだから、ウブな訳はあるまいし、そっち方面に疎いわけではない。
だけど――、認めたくなかった。
屈辱感と敗北感がごちゃ混ぜになった感覚に支配され、ここから抜け出す方法をすぐにでも知りたかった。





高校の時からコンプレックスを抱いて接してきたこの男に、―――私の心だけは、もっていかれたくなかった。









「あ~明日休みだな~まじ嬉しい~」

「……」

「明日何しよっかな。とりあえず溜まった洗濯だな。悠木は?何すんの?」

「………」

「オイ。さっきからシカトかよ。悠木」

「………」

「美奈子」

「…っ!!ちょっと!!何呼び捨てしてんのよ!」



京都駅を降りると急に饒舌になった高瀬にいきなり名前で呼ばれて、
私は漸く顔を上げた。



「お前が無視するからだろ。」

「だからって呼び捨てにしないで!」

「じゃあお前もシカトすんなよな」




舌打ちを落として、高瀬が私を睨んだ。
その表情に一瞬怯む。



この時――心が非常事態の時に――いきなり名前で呼ばれて、私は心臓が飛び出るほどびっくりした。
だけど、高瀬と私のやり取りは相変わらずで、それが唯一の救いだったかもしれない。
案外普通に話を返せたことに、安堵の溜息が零れた。
高瀬は会社の連中と話す時と違って、私に対しては話し方が幼くなる。
高校の時と会話レベルが変わらないのは、私だって同じで。
このやり取りが三十路前の男女ふたりのそれとは、幼稚としか言いようがない。



(早くひとりになって、頭を冷やしたい…)



願うのはそんなことばかりだった。
今日はお酒も大分飲んだし、脳内が麻痺してるんだ。
心の中でそう言い聞かすことで、自分を保つことに必死だった。





「悠木、ひとつ聞いていいか?」




その時だった。
先程とは打って変わって真剣な声色が隣から鼓膜に届く。
右隣に歩いていた高瀬が、足を止めたから、私も自ずと立ち止まる羽目になった。
京都駅の改札を出てちょうど。
サラリーマンは皆帰路を急いでいるというのに。
私と高瀬の空間だけが時を止めた。





「まだ、俺のこと嫌い?」

「…え?」

「高校の時。悠木は俺のこと嫌いって言ったよな」

「………」

「今はどう思ってんの?」




今日は厄日だ。
いきなりど真ん中、ストレートな質問を投げかけてくる高瀬に、私は言葉を失っていた。
前にまわられて、高瀬と私は向かい合った。
見上げた先には高瀬の珍しく真剣な顔があって。
普通より薄めの色素を宿した瞳が、真っ直ぐに私を見ていた。




目を逸らす勇気がない。
正確には、その瞳に吸い込まれてしまいそうになって、目が離せなかった。
抗えない。動けない。
私の動きを全て止めてしまうような、そんな強い力を持った瞳。







「どうして急にそんなこと…」

「ずっと思ってた。ずっと聞きたかったから――。どうなの?悠木」









「私は……、」

「―――美奈子?」





その時、
高瀬とは違う、もうひとりの男の声が私の名前を呼んだ。




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